カイシンノステミ

毎月100冊以上の漫画を読みながら発達障害でわちゃわちゃしています

【本物と偽物の境界線】高山羽根子の新作「如何様」が過去一でキレッキレだから今すぐ読んで【芥川賞候補なるか?!】※感想・ネタバレあり

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いやいやいや、161回の芥川賞が終わったのに、もう次の芥川賞候補作みたいの読んじゃいましたよ。

ほんとマジでキレッキレだから気になった人はすぐ読んで。

書籍化まだなんだけどさ。

 

今回ご紹介するのは小説 TRIPPER (トリッパー) 2019年 夏号に掲載のコチラ!

高山羽根子氏の新作「如何様」でございます!

「如何様」高山羽根子 あらすじ

Amazon 小説 TRIPPER (トリッパー) 2019年 夏号 [雑誌]

戦後、平泉貫一という画家が戦地から復員してきた。

しかし戻ってきた彼は、出兵前とは似ても似付かぬ全くの別人の姿をしていた。

記者であり主人公の「私」は別人が貫一に成り済ましているのではないかと、貫一の友人である榎田に調査を依頼される。

果たして彼は「本物」なのか。偽物とは一体、何をもって「偽物」になるのだろうか。

「カム・ギャザー・ラウンド・ピープル」が第161回芥川賞の候補に挙げられた、高山羽根子の新作中編。

謎が謎を呼び、事実と真実が交差する「如何様」

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舞台は戦後間もない日本。

記者である「私」は探偵のようなことも行っており、今回の依頼もそのうちの一つとして、いつも通り調査を開始する。

調査内容は「戦地から復員してきた画家が本人であるかどうか」

平泉貫一という画家が戦地から復員してきたのだが、顔つきが全く変わってしまっていた。

残されていた戦前の写真と比べてみても、似てる部分を探すのが難しいほど面影がなく、「戦争に行ったのだから、顔つきも変わるだろう」では済まされないほどの変貌ぶりだ。

 

平泉貫一には両親と妻があったものの、両親は亡くなったと思っていた息子が帰ってきたという喜びで、似ても似つかない「貫一」を本人だと喜んで迎えた。

一方の妻はというと結婚前のほんのした手違いで、戦地に向かう前の「貫一」には会ったことがなかった。

妻の彼女にとっては、今の「貫一」が「貫一」なのだ。

 

「貫一」の友人である榎田に依頼された「私」は、画家であった「貫一」の仕事仲間や戦地で所属していた部隊の隊長などに聞き込みを始め、本物の「貫一」へと少しずつ迫っていく。

 

「本物」とは一体なんなのか。

「偽物」とは何を持って偽物なのか。

 

徐々に明らかになる「事実」と目の前の人たちの抱える「真実」が交差し、私たちの抱いている幻想ともいえる「本物」像が音を立てて壊れていく。

【ネタバレ小】前作「カム・ギャザー・ラウンド・ピープル」よりも研ぎ澄まされた「如何様」!

Amazon カム・ギャザー・ラウンド・ピープル 

こちらの記事でも書きましたが

 前作の「カム・ギャザー・ラウンド・ピープル」も芥川賞にノミネートされただけあってというか、ものすごく面白くて個人的には「むらさきスカートの女」よりも好きな作品でした。

ただ、やっぱり芥川賞受賞となると「むらさきスカートの女」なのは納得してしまう部分もあり、芥川賞の選評でも「惜しい!」という声が非常に多かったのですが

この「如何様」は獲るでしょう。

 

今の時点でそれは言い過ぎかもしれませんが、間違いなく前作の「カム・ギャザー・ラウンド・ピープル」を凌駕する作品になっています。

 

謎を謎のまま「ポイッ」と横に投げつつ、こちら側をあっちこっちと(気持ちよく)振り回す作風はそのままに、「カム・ギャザー・ラウンド・ピープル」で話題になった「語らなさすぎる」を本当にちょうどいい塩梅で最後まで押し通すこのユラユラ感。

 

「語らなさすぎる」ことで「語りかける」高山羽根子氏の声は「如何様」では鋭さを増し、読み手の心をいつの間にかに、まるで蛇のように締め付けます。

 

とにかく、前作「カム・ギャザー・ラウンド・ピープル」でしびれた人、この記事でちょっとでも気なった人は間違いなく必読の作品です。

マジで超超オススメ。

高山羽根子の新作「如何様」が過去一でキレッキレだから今すぐ読んで まとめ

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ネタバレを思いっきりした感想を書く前に一度まとめます!

 

というわけで今回は高山羽根子氏の「如何様」をご紹介しました!

まだ書籍化されてないものを紹介するのはどうなのよ!って思ったのですが

そんなん言ってる場合じゃねぇくらい素晴らしいのよほんと。

「百の夜は跳ねて」なんて読んでる場合じゃないって。

 

まだこの8月の時点では定価で「小説 TRIPPER」を買うことができるので、気になった人はマジですぐ買っちゃったほうがいいです。

 

下手するとプレミアみたいになっちゃってスンゲー値段上がったりするしさ!

1000円だからさ!そんなん安いもんでしょ!

 

「百の夜は跳ねて」なんか買うんだったら間違いなくこっち買ったほうがいいから。

 

新刊だけじゃなくてこういう月刊誌系も読んでみるもんですね。

それでは!また!

小説 TRIPPER (トリッパー) 2019年 夏号 [雑誌]

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【ネタバレ大】意味すら野暮に感じる美しすぎるラストシーン

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様々な登場人物が「変化前」や「変化後」の貫一を語る中で、唯一「今」の貫一しか知ることのない妻・タエ。

個人的には、彼女がこの物語の主人公のように感じている。

冒頭で「私」が調査として訪問した時も優しくおおらかに受け入れ、それと同様に一度も見たことのなかった「貫一」すらもそのままを受けれ入れていた彼女。

 

戦後間もない、みんなが後ろめたい過去や新しい未来を見つめていた中で、彼女は「今」を見つめて、「今」だけを「本物」として精一杯生きていた。

 

貫一の「作品制作」に使う"付け髭"をつけて、「私」と一緒に声をあげて踊るシーンは明るくも刹那的で、なんとも言えない笑みがこぼれそうになる。

 

この作品のラストは本当に見ものだ。

小説ビギナーの私は、文章だけであんなにも美しい風景が描写できるなんて心の底から感動してしまった。

一枚、もう一枚と外国の紙幣を風の中に放つタエ。

意味を考えるのすら野暮に感じ、美しすぎて涙が溢れる。